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第十七話 3パック198円

兎が家を出てから数日
山を越え街道沿いを歩いていた時のこと

前方でなにやら人だかりが出来ていた

悪者1(のがも)「 おい、親父!誰の許可を得て商売やってやがるんでぃ! 」

キノコ売り「 さてはて・・・
       誰の許可と言われても、ここは天下の往来じゃがのう 」

悪者2(雷精)「 ふざけるなっ!ここは銀河団の縄張りだ!
          勝手に商売されたら、こっちのおまんまが食い上げなんだよ 」

キノコ売り「 ほぅほぅ、まっとうに畑でも耕せばよかろうて・・・
       秋には美味しい作物がたらふく食えるぞよ 」

のがも「 面白いじじいだ・・・
     さっさと出すもの出せば大人しく引き下がるものを・・・ 」

そういうと、のがもは売り物のしいたけが入ったパック掴み
地面に投げつけ、足で踏みにじる

その瞬間、それまで温厚に見えたキノコ売りのおっちゃんの顔が
みるみる鬼の形相へと変わった

鬼のようなキノコ売り「 きぃーさぁーまぁーらぁああー!!!
              よくもしいたけを足蹴になんぞしやがったな・・・
              死んでキノコさんに詫びるがいい!!! 」

雄叫びにもにた怒鳴り声を上げると
目にも止まらぬ動きで、のがもと雷精をコテンパンにやっつけた

その動きは無駄が無く、相手の攻撃をひらりとかわし
体勢が崩れるとみるや即座に攻撃に繋げる見事なものだった

のがも・雷精「 き、今日はこれぐらいで・・・勘弁してやるぜ・・・ 」

捨て台詞を吐くと、二人はボロボロになった体で逃げ出した

その一部始終を見ていた兎が、キノコ売りのおっちゃんに話しかける

兎「 おっちゃん凄いな、めちゃくちゃつえーよ! 」

キノコ売り「 なになに、今は隠居の身、大したものではないですじゃ 」

兎「 それにしても見事なものだったな・・・魅入ってしまった 」

キノコ売り「 褒めても何も出やせんぞい、キノコなら売ってやるがな 」

キノコ売り「ん・・・?それは? 」

キノコ売りのおっちゃんの目は、兎の胸元へ釘付けとなっていた

兎「 ん?あぁ、これかい?旅のお守りにもらったペンダントだよ 」

キノコ売り「 それをくれた人はどこに居るのだ? 」

兎「 家にいるよ、今頃、狼の散歩でもしてるんじゃないかな? 」

キノコ売りのおっちゃんの話しでは
このペンダントは昔、自分が仕えていた貴族の家のものだという

ペンダントの中央にはめられた宝石に、家紋が刻み込まれていたのだ


キノコ売り「 もしや、そのペンダントをしていた方は・・・
       歳のころなら20歳ぐらいの、女子かい? 」

兎「 へ?葵姉ちゃんのこと知ってるのか? 」

キノコ売り「 知っているも何も・・・
       葵様をお守りするのが、わしの役目だったのじゃ 」

キノコ売り「 戦争のごたごたで、主人の家は離散し・・・
       敵兵に蹂躙された町は大混乱になったのじゃ・・・」

キノコ売り「 ご主人様も奥方様も、そのときに命を落とされて、
       葵様も行方知らずになって、方々を探したが・・・」

キノコ売り「 てっきり、もうこの世には居られないものとばかり・・・ 」

兎「 へぇー、姉ちゃんなら家にいるよ、カセドリア村に 」

キノコ売り「 なに?坊主は烏賊足家のものか? 」

兎「 うん、烏賊足兎ってんだ、物知りなおっちゃんだな! 」

キノコ売り「 ふむ、名乗るのが遅れたようだ・・・」
キノコ売り「 わしは元カセドリア国防軍第一師団団長の「しいたけ」じゃ 」

しいたけ「 して、烏賊足パパ殿はご息災か? 」

兎「 親父は・・・死にました・・・ 」
しいたけ「 なんと、烏賊足殿が・・・ 」

兎は親父が死んだこと、家族のことをしいたけに話をした
特に葵のことに関心があるらしく、葵は元気でいる、と・・・

それから、なぜ自分が旅にでたのか
また、バンク大会にみんなで参加することを伝えた

しいたけ「 ふむ・・・坊主、構えてみろ 」
兎「 へ? 」

しいたけ「 いいから構えてみるんじゃ 」
兎「 うん・・・ 」

兎は愛用のデリーターを構え、しいたけを見る

しいたけ「 なっとらんな・・・構えすら隙だらけではないか 」

兎「 見ただけでわかるのか? 」

しいたけ「 お前なんぞ・・・ほれ、この割り箸でも相手できるわい・・・ 」

兎「 言ったな!怪我しても知らないぞ? 」

しいたけが割り箸で構えを取ると・・・
兎は得体の知れないプレーッシャーに襲われていた

兎「 ・・・うっ・・・うぅ・・・ 」
しいたけ「 ほれ、かかってこんのか?どれ、わしからいこうかの・・・ 」

しいたけが一歩を踏み出すと
兎には、しいたけの体が何倍にも大きく見えた

兎「 ひ、ひぃ、参りました・・・ 」

しいたけ「 ふむ・・・どうやら目は確かなようじゃ 」

兎「 しいたけ先生・・・
   どうか、俺に両手ヲリのことを教えてもらえませんか? 」

しいたけ「 ほっほ、素直な奴じゃ・・・いきなり先生もなかろうて 」
しいたけ「 まぁ、ここで話すのも何じゃ、家に来るかいのう? 」

兎「 はい! 」

しいたけは兎の眼を見て、自分の手で育ててみたいと思ったのだった

このとき、兎はしいたけがカセドリア史に残る
伝説のウォリアーであることを知らない