こぼれ話7 葵と壷
壷と葵は同じ日に烏賊足家の家族となった
二人とも同じ保護施設で暮らしていたのだが
烏賊足パパに引き取られたのだ
葵はまだ物心がつく前に戦争で親を失い、村の擁護施設で育った
その頃は戦争が酷く、親を失った子や捨てられた子が多く
各地に擁護施設が作られたのだ
幸い、葵は自分の家族が戦争で命を落としたことを知らない
いつか・・・家族が迎えにきてくれる・・・
そう信じていた
葵が7歳になった年、擁護施設に新たな仲間が加わった
4歳になったばかりの壷だった
擁護施設に来たばかりの頃
壷は絵本ばかり読んでいて、仲間の輪に加わることが出来なかった
そのため、友達も居なかった
擁護施設の中でも年上で、みんなの中心的存在であった葵は
壷を輪に溶け込ませようとしていた
葵「 壷ちゃん、なにみてるの? 」
壷「 ・・・絵本 」
葵「 面白い? 」
壷「 ・・・うん 」
葵「 そっか、壷ちゃんは絵本が大好きなんだね! 」
葵「 お姉ちゃんも一緒にみてもいいかな? 」
壷「 ・・・うん 」
それから、葵は毎日のように壷に色々な絵本を読んで聞かせた
葵「 壷ちゃん 」
壷「 ・・・なぁに? 」
葵「 絵本も楽しいけど、みんなと一緒に遊ぶのも楽しいよ? 」
壷「 ・・・僕、葵姉ちゃんと絵本読んでるほうがいいや 」
どうしても仲間の輪に加わろうとしない壷であった
また別の日
アル「 わー、甘えん坊の壷がきたー!うつるから逃げろー 」
リリチャ「 本の虫だーにげろー 」
葵「 こらっ!そんなこと言ったらだめでしょ! 」
葵「 なんで、みんなで仲良くできないの! 」
葵が壷を構うことで、ほかの子が嫉妬していたのだ
葵「 壷ちゃん、気にしちゃだめだよ? 」
葵「 それと言われっぱなしも良くないかな・・・ 」
葵「 壷ちゃん男の子なんだから、はっきり言わないとね? 」
壷「 うん・・・ 」
それから、5年ほど月日が流れ
葵12歳、壷10歳の時
葵は、少しでも擁護施設の助けになるよう
近所のスーパーでアルバイトをしていた
一方、壷は、相変わらず、仲間の輪から距離を置いていた
壷は擁護施設で、自分の居場所が無いと感じていた
壷「(葵姉ちゃんも、もう・・・側には居ない・・・ )」
ある晩のこと、みんなが集まり食事の準備をしていた
そこへ突然一人の子が走ってきた
ケナ「 葵お姉ちゃん、大変だよ! 」
葵「 うん? 」
ケナ「 壷お兄ちゃんがどこにもいないの・・・ 」
葵「 え? 」
壷は擁護施設を抜け出したのだ
擁護施設は大騒ぎになり、みんなで手分けして壷の行方を捜した
葵「 壷ちゃーん!壷ちゃーん!どこにいるのー 」
必死に探し回る葵
ふと小さい頃に壷と話したことを思い出す
壷「 葵姉ちゃん・・・ずっと僕と一緒にいてくれる? 」
葵「 うん、いいよ・・・ずっと一緒だからね 」
優しく抱きかかえながら、葵は言った
壷「 絶対だよ?絶対ずっと一緒だよ? 」
葵「 あら、私が壷ちゃんに嘘ついたことある? 」
壷「 葵姉ちゃん大きくなったら、僕のお嫁さんになってよ 」
葵「 そうねー・・・壷ちゃんがうーんと強くて
優しい人になれたら、お嫁さんになってあげる 」
壷「 本当?なる!僕、強くて優しい人になるからっ 」
葵「 うん 」
葵「 壷ちゃん・・・どこにいるの・・・ 」
村を出て思い当たるところを必死で歩き回るが見つからない
それでも、諦めずに葵だけは壷を探し続けた
そして、夜も明ける頃
村から離れた橋の下で、丸まって眠る壷を見つけた
葵「 壷ちゃん?!壷ちゃん! 」
壷「 ・・・むにゃ・・・・へ!?葵姉ちゃん・・・? 」
葵は壷に抱きついて大声で泣いた
壷「 葵・・・姉ちゃん・・・どうしてここに・・・ 」
葵「 ・・・ウゥッ・・・壷ちゃんが居ないって・・・ヒック 」
葵「 みんな・・で探して・・・ヒック・・・やっと見つけたの・・・ウゥ 」
葵「 どうして・・・ヒック・・・出て行くの・・・ゥッ・・・ 」
壷「 俺・・・もう居場所がないとおもって・・・ 」
壷「 葵姉ちゃんも、いそがしそうだし・・・ 」
葵「 馬鹿っ・・・そんなことで強い人になれるの?
優しい人になれるの・・・? 」
葵「 自分の居場所がないって思い込んで
人に心配させたいだけじゃない・・・」
葵「 私はね・・・壷ちゃんとの約束、覚えてるよ・・・ 」
壷「 葵姉ちゃん・・・・ 」
葵「 ずっと一緒にいるんじゃなかったの?もう嫌いになった? 」
壷「 そんな訳ないだろっ!俺は世界で一番姉ちゃんが好きだ 」
葵「 もう一人で出て行くとか言わないで、帰ろ?・・・ね? 」
壷「 うん・・・ごめん、姉ちゃん 」
無事に壷が見つかり、2人は擁護施設に戻った
それからしばらくして、戦争が終わり
擁護施設が閉鎖することとなった
各地の有力者や、著名人が養護施設の子供たちを引き取ることとなった
烏賊足パパ「 うちでも預かろう・・・慶太・兎と年が近い子がいいな 」
そして、擁護施設の中でも年長だった葵が、烏賊足家に行くことが決まった
烏賊足パパ「 葵って言うのかい? 」
葵「 はい・・・ 」
烏賊足パパ「 家には慶太と兎ってとても元気な子がいるんだ。
きっと楽しく暮らせると思う、安心しておくれ 」
葵「 ・・・はい 」
そして、擁護施設から葵が引き取られる日
烏賊足パパ「 さあ、慶太も兎も楽しみにまってるぞ!
女の子の家族が増え、家が華やかになるぞ!わっはっは 」
養護施設から出てきた葵、振り返ると壷の姿が
葵「 すいません・・・私、やっぱり行けません・・・ 」
烏賊足パパ「 どうしたんだね?なにか訳でもあるのかな? 」
葵「 ・・・・・・ 」
烏賊足パパ「 これからは家族になるんだ、遠慮しないで言ってごらん? 」
葵「 壷ちゃんを・・・壷ちゃんと離れて暮らすのは・・・ 」
烏賊足パパ「 ふむ・・・あの子が壷ちゃんかな? 」
この後、烏賊足パパが擁護施設と話し合い
壷も烏賊足家で引き取ることが決まる
烏賊足パパ「 壷君、これからよろしくな! 」
烏賊足パパ「 決して君は葵のおまけなんかじゃないぞ?
施設の決まりで一人しか引き取れないと言われていたのでね 」
烏賊足パパ「 それで、葵を迎え入れることになったのだが、
もし、壷君もよければ家族になってくれないか? 」
壷は泣きそうな顔で、小さくうなづいた
こうして無事、烏賊足家族に葵と壷が加わった
二人とも同じ保護施設で暮らしていたのだが
烏賊足パパに引き取られたのだ
葵はまだ物心がつく前に戦争で親を失い、村の擁護施設で育った
その頃は戦争が酷く、親を失った子や捨てられた子が多く
各地に擁護施設が作られたのだ
幸い、葵は自分の家族が戦争で命を落としたことを知らない
いつか・・・家族が迎えにきてくれる・・・
そう信じていた
葵が7歳になった年、擁護施設に新たな仲間が加わった
4歳になったばかりの壷だった
擁護施設に来たばかりの頃
壷は絵本ばかり読んでいて、仲間の輪に加わることが出来なかった
そのため、友達も居なかった
擁護施設の中でも年上で、みんなの中心的存在であった葵は
壷を輪に溶け込ませようとしていた
葵「 壷ちゃん、なにみてるの? 」
壷「 ・・・絵本 」
葵「 面白い? 」
壷「 ・・・うん 」
葵「 そっか、壷ちゃんは絵本が大好きなんだね! 」
葵「 お姉ちゃんも一緒にみてもいいかな? 」
壷「 ・・・うん 」
それから、葵は毎日のように壷に色々な絵本を読んで聞かせた
葵「 壷ちゃん 」
壷「 ・・・なぁに? 」
葵「 絵本も楽しいけど、みんなと一緒に遊ぶのも楽しいよ? 」
壷「 ・・・僕、葵姉ちゃんと絵本読んでるほうがいいや 」
どうしても仲間の輪に加わろうとしない壷であった
また別の日
アル「 わー、甘えん坊の壷がきたー!うつるから逃げろー 」
リリチャ「 本の虫だーにげろー 」
葵「 こらっ!そんなこと言ったらだめでしょ! 」
葵「 なんで、みんなで仲良くできないの! 」
葵が壷を構うことで、ほかの子が嫉妬していたのだ
葵「 壷ちゃん、気にしちゃだめだよ? 」
葵「 それと言われっぱなしも良くないかな・・・ 」
葵「 壷ちゃん男の子なんだから、はっきり言わないとね? 」
壷「 うん・・・ 」
それから、5年ほど月日が流れ
葵12歳、壷10歳の時
葵は、少しでも擁護施設の助けになるよう
近所のスーパーでアルバイトをしていた
一方、壷は、相変わらず、仲間の輪から距離を置いていた
壷は擁護施設で、自分の居場所が無いと感じていた
壷「(葵姉ちゃんも、もう・・・側には居ない・・・ )」
ある晩のこと、みんなが集まり食事の準備をしていた
そこへ突然一人の子が走ってきた
ケナ「 葵お姉ちゃん、大変だよ! 」
葵「 うん? 」
ケナ「 壷お兄ちゃんがどこにもいないの・・・ 」
葵「 え? 」
壷は擁護施設を抜け出したのだ
擁護施設は大騒ぎになり、みんなで手分けして壷の行方を捜した
葵「 壷ちゃーん!壷ちゃーん!どこにいるのー 」
必死に探し回る葵
ふと小さい頃に壷と話したことを思い出す
壷「 葵姉ちゃん・・・ずっと僕と一緒にいてくれる? 」
葵「 うん、いいよ・・・ずっと一緒だからね 」
優しく抱きかかえながら、葵は言った
壷「 絶対だよ?絶対ずっと一緒だよ? 」
葵「 あら、私が壷ちゃんに嘘ついたことある? 」
壷「 葵姉ちゃん大きくなったら、僕のお嫁さんになってよ 」
葵「 そうねー・・・壷ちゃんがうーんと強くて
優しい人になれたら、お嫁さんになってあげる 」
壷「 本当?なる!僕、強くて優しい人になるからっ 」
葵「 うん 」
葵「 壷ちゃん・・・どこにいるの・・・ 」
村を出て思い当たるところを必死で歩き回るが見つからない
それでも、諦めずに葵だけは壷を探し続けた
そして、夜も明ける頃
村から離れた橋の下で、丸まって眠る壷を見つけた
葵「 壷ちゃん?!壷ちゃん! 」
壷「 ・・・むにゃ・・・・へ!?葵姉ちゃん・・・? 」
葵は壷に抱きついて大声で泣いた
壷「 葵・・・姉ちゃん・・・どうしてここに・・・ 」
葵「 ・・・ウゥッ・・・壷ちゃんが居ないって・・・ヒック 」
葵「 みんな・・で探して・・・ヒック・・・やっと見つけたの・・・ウゥ 」
葵「 どうして・・・ヒック・・・出て行くの・・・ゥッ・・・ 」
壷「 俺・・・もう居場所がないとおもって・・・ 」
壷「 葵姉ちゃんも、いそがしそうだし・・・ 」
葵「 馬鹿っ・・・そんなことで強い人になれるの?
優しい人になれるの・・・? 」
葵「 自分の居場所がないって思い込んで
人に心配させたいだけじゃない・・・」
葵「 私はね・・・壷ちゃんとの約束、覚えてるよ・・・ 」
壷「 葵姉ちゃん・・・・ 」
葵「 ずっと一緒にいるんじゃなかったの?もう嫌いになった? 」
壷「 そんな訳ないだろっ!俺は世界で一番姉ちゃんが好きだ 」
葵「 もう一人で出て行くとか言わないで、帰ろ?・・・ね? 」
壷「 うん・・・ごめん、姉ちゃん 」
無事に壷が見つかり、2人は擁護施設に戻った
それからしばらくして、戦争が終わり
擁護施設が閉鎖することとなった
各地の有力者や、著名人が養護施設の子供たちを引き取ることとなった
烏賊足パパ「 うちでも預かろう・・・慶太・兎と年が近い子がいいな 」
そして、擁護施設の中でも年長だった葵が、烏賊足家に行くことが決まった
烏賊足パパ「 葵って言うのかい? 」
葵「 はい・・・ 」
烏賊足パパ「 家には慶太と兎ってとても元気な子がいるんだ。
きっと楽しく暮らせると思う、安心しておくれ 」
葵「 ・・・はい 」
そして、擁護施設から葵が引き取られる日
烏賊足パパ「 さあ、慶太も兎も楽しみにまってるぞ!
女の子の家族が増え、家が華やかになるぞ!わっはっは 」
養護施設から出てきた葵、振り返ると壷の姿が
葵「 すいません・・・私、やっぱり行けません・・・ 」
烏賊足パパ「 どうしたんだね?なにか訳でもあるのかな? 」
葵「 ・・・・・・ 」
烏賊足パパ「 これからは家族になるんだ、遠慮しないで言ってごらん? 」
葵「 壷ちゃんを・・・壷ちゃんと離れて暮らすのは・・・ 」
烏賊足パパ「 ふむ・・・あの子が壷ちゃんかな? 」
この後、烏賊足パパが擁護施設と話し合い
壷も烏賊足家で引き取ることが決まる
烏賊足パパ「 壷君、これからよろしくな! 」
烏賊足パパ「 決して君は葵のおまけなんかじゃないぞ?
施設の決まりで一人しか引き取れないと言われていたのでね 」
烏賊足パパ「 それで、葵を迎え入れることになったのだが、
もし、壷君もよければ家族になってくれないか? 」
壷は泣きそうな顔で、小さくうなづいた
こうして無事、烏賊足家族に葵と壷が加わった