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第七話 短剣スカウトへの道

ハイドトレーニングを命じられた倍増であったが、
そのトレーニング内容の酷さに、倍増は壷にメニューの見直しを頼み込んだ。

壷曰く

『 他の人に見つからないように行動できるならそれでもいい 』 らしい

ただ・・・

『 見つかったときのリスクがないと、
  プレッシャーを受ける戦闘じゃ使い物にならない 』 との事

それでも食い下がる倍増に、壷は他の訓練を提案したのだった。


壷「 それじゃ倍増、お風呂の中まで潜入しろとは言わないけど、
   お前は兄妹たちに存在をバレることなく、みんなの生活に入り込むんだ 」

倍増「 ・・・例えば? 」

壷「 まあ、みんなの部屋に潜入して、バレない様に一晩過ごすとかかな 」

倍増「 それってさ・・・葵姉ちゃんとか廃慈姉ちゃんもだよね? 」

壷「 当然だな、むしろプレッシャーが掛かる分、訓練になるだろう 」

倍増「 ・・・バレたら・・・どうするの? 」

壷「 そのときは自分で誤魔化せ。
   練習だってことがばれると、緊張感がなくなるからな 」

壷「 それとだな・・・倍増・・・ゴホンッ! 」
倍増「 なに・・・? 」

壷「 えっとだな・・・
   それぞれ潜入した証拠に写真でも取ってきてくれ 」

倍増「 ・・・そんなもの必要なの? 」

壷「 お前が嘘つくかもしれないだろ?
   お前の訓練は、お前と俺しか知らないんだから・・・ 」

壷「 それで・・・ 」
壷「 葵姉ぇは寝顔を・・・寝顔を頼む!絶対だぞ? 」

倍増「 ・・・・・・ 」

壷「 それと、できたらパジャマ姿も!マジで頼むぜ? 」
倍増「 ・・・断る! 」


こうして、倍増の特訓が始まった。

日中は、兄妹の戦闘訓練をハイドで観察。

はじめて間もない頃は、遠巻きに見守るだけだったが、
日を追うごとに徐々に距離を短縮していき、
戦闘中のど真ん中で、ハイドしつつ攻撃を回避できるようになった。

夜は兄妹の部屋へ潜入、じっと身を潜める。

そんなある日の夜・・・
廃慈の部屋へ潜入した日のことだった。

廃慈「 ・・・ 」ごそごそ

廃慈「 ・・・ 」がさがさ

倍増「(いつもより、そわそわしてるな・・・何かあったのかな?)」

そのとき部屋のドアをノックする音が聞こえた。

慶太「 廃慈いるか?入るぞ? 」

廃慈は慌てて、ドアへ向かうと慶太を招き入れた。
慶太は部屋に入ると、椅子に座り廃慈に話しかける。

慶太「 廃慈・・・話ってなんだ? 」

廃慈はうつむいて、もじもじしているばかりだった。

慶太「 なんだ、今日は話できない日か?
    少しずつ言葉が出るようになってきたと思ったのに、
    まだ自由に話しできるわけじゃないんだな・・・ 」

倍増「(え?廃慈姉ちゃんって話できるの?初耳だな・・・)」

慶太「 まあ焦ることはねぇさ、また調子のいい日にでも呼んでくれよ。
    悩みや相談なら、いつでも乗ってやるからさ、な? 」

廃慈「 ・・・ 」

下ばかり見てた廃慈が初めて顔をあげ、慶太の顔を見た。

廃慈「 ・・・oo 」

慶太「 うん?何か言ったか? 」

廃慈はまた目を伏せて首を横に振った。

慶太「 そうか・・・じゃあまた来るよ。
    最近、兎も連携慣れてきたし、俺達も頑張ろうぜ? 」

廃慈「 ・・・ 」こくりとうなづく

慶太「 じゃあな、おやすみぃ〜 」パタンッ
そう言うと慶太は部屋から出て行った。

倍増「(・・・・・・)」

廃慈が言った一言

倍増は思いのほか、近くでハイドをしていた為、
廃慈が何を伝えようとしたのか聞こえていた。

倍増「(廃慈姉ちゃん・・・)」

倍増は泣いた、心の中でひっそりと・・・

やがて夜は更けてゆき、
何事も無かったかのように、また朝がやってくる

そこにはどこか吹っ切れた顔の倍増が居た