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第十話 葵の性格

兄妹で合同訓練を行った後、葵は悩んでいた

葵「(魔法当らないよ・・・このままじゃみんなの足引っ張っちゃう)」
葵「(どうして・・・思ったところに魔法が飛んでくれないのかな・・・)」

そこへ兎が通り、悩んでいる葵に気づく

兎「 ん?姉ちゃんどうした?
   悪性ガンの告知を受けると同時に会社が倒産して
   首を吊ろうか迷ってる経営者みたいな不景気な顔で 」

葵「 ・・・突っ込みにくい例えを出すんじゃない! 」

兎「 えへへ、まぁ、姉ちゃんにそんな顔は似合わないってことさ 」

葵「 でも、今日の訓練で自分の実力を思い知ったでしょう?
   私、このままじゃみんなに迷惑を掛けちゃいそうで・・・ 」

兎「 んなの気にすることねーって!
   そりゃ、活躍できたほうがいいだろうけどさ。
   誰がってことじゃなくて、俺達は7人でひとつだろ?
   姉ちゃんも含めた全員が烏賊足のメンバーなんだからさ 」

葵「 ・・・うん 」

兎「 それに、落ち込んでたからって何か変わるわけじゃないし。
   姉ちゃんのそんな顔見てたら、俺が調子悪くなりそうだよ。
   姉ちゃんは元気が一番っしょ! 」

葵「 ・・・そうだねっ、落ち込んでてもしょうがない
   うさうさありがとねっ、ちょっと元気でたよ 」

兎「 そうそう、姉ちゃんは元気じゃないとね 」

そして翌日も葵の特訓は続く

葵「 アイスボルト! 」
春を狙った魔法は、壁に当って消える

葵「 アイスボルト! 」
春を狙ったはずが、植木に命中

葵「 アイスボルト! 」
やはり、春を狙っているのに氷は上空を目指して飛んでいく

壷「 なんでだ・・・いくら才能が無かったとしても
   これほど当らないのは・・・おかしすぎる 」

杏「 最初から後ろに向かって魔法撃てば案外当るんじゃね? 」

慶太「 ・・・なんでだろうな? 」

廃慈「 ・・・ 」

兎「 面白いほど外すね・・・かえって半端に当るより、すがすがしい! 」

倍増「 葵姉ちゃん、がんばって・・・ 」

葵の魔法は相変わらず春に当ることは無かった

それから数日後のことである
葵は息抜きにヲリの訓練を見ていた

慶太「 そらっ、兎!もっと揺さぶらないと反撃を受けるだけだぞ? 」

兎「 あーもう!
   廃慈!兄ちゃんにバッシュしてくれ!ヘビスマするから 」

廃慈「 ・・・ 」

慶太「 いまは1対1だろ!両手の利点を考えろ! 」

兎「 攻撃力が高いっ!食らえっヘビースマッシュ! 」

慶太「 攻撃力が高くても当らなければ意味ないだろ・・・
    ちっとは学習しろよな・・・まったく 」

兎「 動くなっ!卑怯者ぉー! 」
慶太「 頭冷やせっ! 」(スラムアタック)
兎「 うぎゃっ 」

慶太のスラムアタックをまともに受けた兎は、激しく壁に激突した

あまりにも激しくぶつかった為か、
壁の上に積んであった、漬物石が兎をめがけて落下してきた

慶太「 兎っ!危ない 」
廃慈「 ・・・!! 」

兎は漬物石が落ちてきていることにすら気づいていない
気づいたとしても、完全に態勢を崩していて、とても回避はできない

みんなが目をつむり祈る、その瞬間・・・

葵「 アイスジャベリン!! 」

葵はとっさに杖を取り出すと、
落下する漬物石に向かい渾身の魔法を放った

兎「 あいててて・・・
   兄ちゃん、ちょっとは手加減してく・・・ぇ?なにこれ・・・ 」

兎は頭上で凍り付いている漬物石にようやく気づく、と同時に・・・

兎「 ほぇええええええ・・・ 」
間抜けな声と共に腰を抜かした

慶太「 葵・・・ 」

廃慈「 ・・・ 」

葵「 ・・・やった 」

葵は安心したのか、そう一言いうと地面ぺたりと座り込んでしまった

慶太「 凄いじゃないか、いつの間に魔法が当るようになったんだ? 」

葵「 ・・・ううん、判らないの。
   兎が危ないって思ったら、勝手に体が動いて・・・ 」

慶太「 ふむ・・・ 」

慶太は壷を呼ぶと、ありのままに起こったことを伝えた

壷「 ・・・なるほど、もしかしたら葵姉ぇさ・・・
   兄妹や春に魔法を撃つの無意識に避けてたんじゃないかな・・・
   葵姉ぇ・・・・優しいし。
   これは俺のトレーニング方法が間違ってたのかもしれないな 」

葵は、兄妹が見守る中、杖を構え
落ちている小石に狙いをさだめる

葵「 アイスボルト! 」
杖の先から冷気がほとばしり、狙い通り標的の小石を撃ち抜いた

兎「 おお!もう一回もう一回やってみて 」
壷「 やっぱりそうか、葵姉ぇの性格が原因だったんだ 」
慶太「 なるほどな、あとはどうやって人に撃てるようになるかだな 」
倍増「 葵姉ちゃん、カッコイイー!凄いね 」
廃慈「 ・・・ 」
春「 わん!わん! 」

杏「(・・・なんで・・・私には命中したんだろう・・・)」


ただ一人、複雑な心境を胸に烏賊足兄妹の修行は続く