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第二十六話 戦争が生んだ悲劇

倍増が烏賊足兄妹に加わったのは、兎に続き2番目だった

あれは倍増がまだ5歳の時のこと・・・
倍増が住んでいた村には子供達しか居なかった

村は、戦場からほど近く、何度も敵の攻撃を受けた
村の大人達は、自衛の為に立ち上がったが全滅してしまった

村へ侵入した敵は、食料や金目のものを略奪した

村の子供達は、危険を避けるために地下広場へと集められていたため
なんとか生き延びることができた

しかし・・・
地下室から出た子供達が目にしたものは無残な光景だった


数年後
子供達だけの盗賊団の噂が流れ始めた
倍増もこの盗賊団の一員になっていた

倍増「 ・・・ナラン姉ちゃん、ゲブランドの輸送隊が来るみたい・・・ 」
ナラン「 ふむ・・・輸送隊の規模はわかる? 」

倍増「 ・・・遠目に見ただけだけど・・・結構いっぱいいた 」
ナラン「 偵察も満足に出来ないのか・・・ 」

ナラン「 仕方ない、テオ!倍増に付いていってくれ 」
テオルス「 ちぇっ・・・仕方ない、倍増案内しろ! 」
倍増「 ・・・ごめん、テオ兄ちゃん 」

テオルス「 お前も男なら簡単に謝るんじゃない 」
倍増「 ・・・ごめん 」

ナラン、彼女は一見華奢な女の子にしか見えないが
行動力・判断力に優れ、その戦闘能力の高さから盗賊団の頭目となった

テオルス、彼はナランの幼馴染で、ナランを影で支える

戦争により村と家族を失った子供達は盗賊団となったが
決して村や一般の人を襲うことはなかった


ある日、カセドリアからの輸送隊を、ナラン率いる盗賊団が襲撃した

ナランが道端で倒れているのを発見したカセドリア輸送隊は
進行を止め数人の兵隊がナランへと近寄る

その隙に、草むらに隠れていたテオルスを含めた数名が
手薄になったカセドリア輸送隊の馬車を襲い逃げる

兵隊がテオルス達の後を追うと、倒れていたナランが起き上がり
隠れている残りの盗賊団と協力して、残った兵隊を片っ端から倒していく

一方、テオルスは、輸送隊から十分距離が離れたのを見計らい
追ってくる兵隊に、馬車が襲われている事を知らせるそぶりをする

ナラン「 いっただきまーす 」

兵隊は馬車が襲われている事に気づき、急いで引き返すが
馬車につく頃には、盗賊団は姿をくらませていた


盗賊団はカセドリア輸送隊の襲撃に成功し、隠れ家へ戻った

そのとき

兵隊「 お前らは完全に包囲された、大人しく投降せよ! 」

ナラン「 罠!? 」

気付いたときには遅かった
すでに隠れ家はカセドリアの兵士に包囲されていたのだ

兵隊「 見たところ子供だけのようだな
    大人しく投降すれば危害は加えない、投降するんだ 」

ナランは、とっさに仲間達をかばうように前に出る

ナラン「 黙れ! 」
ナラン「なんで私達が盗賊の真似ごとをしてるか、お前らにわかるか! 」

兵士「 投降する気がないのなら、やむを得まい・・・ 」

号令とともに、包囲を狭めるカセドリア兵
もはやこれまでかと思った、その時!包囲の一角で何かが爆発を起こした

テオルス「 ナランこっちだ! 」
テオルスが、隠れ家の異変に気付き奇襲を掛けたのだ

ナラン「 テオ!よし、みんな離れるな・・・突破するよ 」
ナランが子供達を守りつつ、包囲を破ろうと突撃する

アル「 あっ! 」
しかし、子供達の中で一番年下のアルが、小石に足を取られて転倒してしまう

ナランや、他の子たちは、兵隊から逃げるので精一杯で
アルが転倒していることには気がつかなかった

兵隊はアルを捕まえようと迫る

倍増「 うわぁああああああああ! 」

しかし、アルが捕まる寸前に
倍増が体当たりをして、カセドリア兵を止めていた

倍増「 ナラン姉ちゃん!アルを! 」

倍増の声にナランが気づき、倒れているアルを抱え上げる

ナラン「 倍増! 」
倍増「 僕はいいから・・・みんなを・・・! 」


盗賊団は、無事にカセドリア軍の囲みを突破し逃げ延びた

倍増ひとりを除いて・・・

ナランは自分を責めたが、どうしようも無かった


一方、捕らえられた倍増は、指揮官の元へ連行されていた

指揮官「 ・・・こんな年端もいかぬ子供達が盗賊団を・・・ 」
倍増「 ・・・ 」

指揮官「 お前達は、なぜ盗賊の真似ごとを・・・?親は?家族は? 」
倍増「 ・・・ 」

指揮官「 事情はどうあれ、盗賊行為を放置するわけにはいかんのだ 」
指揮官「 聞かせてくれないか?なぜこんなことをしているのか、その訳を・・・ 」

倍増「 ・・・お前らのせいだっ! 」

倍増は、村を襲った悲劇・・・
そして、みんなで生き延びる為に盗賊になったことを指揮官に話した

指揮官「 ・・・そうか、お前たちも・・・この戦争の被害者か 」
倍増「 同情なんて・・・ 」

指揮官「 同情などではない・・・ 」
指揮官「我々が始めた戦争によって各地で悲劇が起きている・・・ 」
指揮官「 いつまでも、このままで良いとは思ってはおらんよ・・・ 」

倍増「 ・・・そんなこと・・・いまさら・・・ 」

指揮官「 いまさらだがな・・・現実だ 」
指揮官「 おきてしまったものは戻すことはできん 」

指揮官「 だが、せめてお前達を全員、カセドリアに連れて行き保護したい 」
倍増「 ・・・そんなの信じられるか! 」

説得を続ける指揮官に対し、頑として口を割らない倍増

この後、倍増はカセへと移送されたが
指揮官の弁護により指揮官の監護と言う条件付きで開放された

烏賊足ぱぱ「 倍増、これからお前は私の家で暮らすのだ 」
倍増「 ・・・ 」

倍増「( ナラン姉ちゃん・・・テオルス兄ちゃん・・・みんな・・・ )」
倍増「( また・・・どこかで会えるよね・・・?) 」

こうして烏賊足家へと迎えられた倍増だが
慶太・兎と打ち解けるのに、さほど時間はかからなかった